アルコール依存症からの回復(体験談その4)

AAセクシュアルマイノリティのメンバー、AWさんの体験談です。

『私個人の、自分のセクシュアリティを受け入れてきたプロセスについての体験を書きます。

私自身、AAミーティングに行くことが日常的になると、たとえば借金をするとか、わけのわからない行動は取らなくなりました。
飲んでいた頃に比べれば、静かな生活を送ることができるようになったのです。
お酒をやめて三年くらいたっていました。
そんな頃にだんだん大きくなってきた不安は、性違和症候群を抱えた自分が(当時は性違和症候群という言葉がなかったので、同性愛者と言っていましたが。)この先どう生きていくのだろうというものでした。
AAにつながったばかりの頃は、カミングアウトもたやすかったのですが、仲間たちとの関係が密になってくると、不安や怖れを感じるようになりました。
飲んでいる頃にカミングアウトはしていましたが、やっぱりアルコールの力を借りていたことは大きく、じっくりと自分で自分を受け入れていたわけではなかったのです。
プロセスとしては、ゴタゴタした暮らしが収まり、自分と向き合う時間を与えてもらったのですが、まるで十代に戻ってしまったかのような感覚に混乱しました。
ソブラエティ(飲まない生活)はぐんぐん進んでいくもので、昔感じた感情を二度と感じることはないだろう、という錯覚もありましたから。
ストレートの仲間たちと自分を比較する・・劣等感を感じる(それはセクシュアリティ以外のことでも感じるものでしたが)・・そうした不安は、怖れや、自己憐憫、周囲の人たちへの不満というふうに拡大していきました。
せっかくお酒を飲まなくなったのに、どこか自分のカラに閉じこもるようになっていました。
アルコールにまつわる話では、私はあまり違い探しはしませんでした。
でもセクシュアリティのことでは、AAメンバーたちが自分とは違う人種に感じられました。
飲んでいた頃と同じような感じ方です。
女性ミーティングや若い人たちのミーティングがあるように、セクシュアルマイノリティのミーティングもあればいいのにな、と感じるようになっていました。
先行く仲間が「必要なものは与えてくれますよ」と励ましてくれましたが、ひねくれて「必要じゃないから与えられてないって言いたいのかな」なんて受け止めていました。
それからしばらくは苦しい時期でした。
そうした立場の違いを口実に、AAから遠ざかろうとしていたのかもしれません。
それは、再びアルコールに向かうということです。
ただ、私はミーティングやメッセージは欠かせないローテーションとして参加し続けていました。
ステップ4、5も繰り返し行っていました。

そんな毎日を重ねている中、オープンスピーカーで「僕はゲイです」と話す仲間と出会うのです。
その仲間は、すぐにミーティングを作っていました。
自分のカラに閉じこもって何もしなかった私とは、大違いです。
私もそのミーティングに参加させてもらいました。
でもしばらくは「AAはストレートのメンバーばかりだし」と不満をこぼしてばかりでした。
ところがそこにいた仲間は違ったのです。
「自分は、AAの中でくらい、アルコホーリクでゲイである、そのまんまの自分でいたいよ」そう話していたのです。
その前向きな言葉に、目が醒める思いがしました。
“自分の気持ちを言葉にしないと、それは現実としていつまでも認識されない”ということを聞いたことがあります。
通じても通じなくても、自分から語りかけていくことがなければ、何も変わらないことを感じました。
ストレートの仲間たちの中でも、自分のセクシュアリティについて話すようになりました。
だんだん、自分も待っているだけではダメだと思い、仲間たちとセクシュアルマイノリティたちに向けて、メッセージ活動も行うことにしました。
一人でカラに閉じこもっていた頃には考えられないほど、たくさんのセクシュアルマイノリティたちに出会うことになりました。
同じ立場の仲間たちとのかかわりの中で、自分一人では破れなかったものがどんどん開かれていくようでした。

カミングアウトをすれば、傷つくことは避けられません。
相手もいろいろな考えや感じ方の歴史を持っている、生身の人間だからです。
カミングアウトしたての頃は「わかってよ」という気持ちや気負いも大きかった気がします。
リラックスしてできるようになるには、経験を重ねていくしかないようです。
受け入れてくれる人、なんとなく居心地悪そうにしている人、ハッキリ嫌悪を口にする人、いろいろな人たちがいました。
でも、その中で私に起こってきた変化は、相手が受け入れてくれたか、受け入れてくれなかったかに関わらず、私自身が私を引き受ける覚悟ができてきたことです。
今でもカミングアウトする場面でいつも思い出す言葉があります。
「自分の気持ちをぶつけて、相手の人にそっぽをむかれても、それで相手を嫌いになるんなら、あんたがダサいんだからね」。
なんの話からそんな話になったのかは忘れましたが、20歳の時に専門学校のクラスメートから言われた言葉です。
“相手を恨まない、自分を引き受ける”それができるくらいなら、当時、アルコールに逃げることもなかったのですが(笑)。
でも、AAプログラムを踏んでいると、かつてはそうしたくてもできなかった感じ方や考え方が(少しずつですが)できるようになってくることに驚かされています。

ある時、通常ミーティングで、少人数だったこともあるのか、そこにいた人たち全員が、その人固有の問題を打ち明けながらわかちあいされたことがあります。
病気や経歴など、人によって抱えているものは違いましたが、それぞれがマイノリティという立場に立っていることがわかりました。
ですが「飲まないで生きていく」という共通項が、それぞれ違う立場の私たちを結びつけていることを感じ、私は胸が熱くなりました。

振り返ると、できるだけたくさんのミーティングに参加して、できるだけたくさんの仲間たちとかかわって、12のステップの繰り返しをしてきた土壌があって、そうして、はじめて自分を受け入れ、人を理解したいという気持ちがもたらされたのでした。』


これからも、ブログにメンバーの体験談を掲載します。
なお、体験談はすべて個人の体験/意見であり、AA全体を代表する意見でも、AAセクシュアルマイノリティのグループを代表する意見でもありません(AAメンバーの話はすべてそうです)。
ブログではメンバーの体験談に対する、みなさんのご意見/ご感想をお待ちしています。
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by aa-sekumi | 2008-11-25 21:33 | Comments(0)
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